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  • 研究内容 » 環境にやさしい有機合成概論
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有機化合物は人類の繁栄に必須

炭素は地球上で唯一、3つの結合モードをどこまでもつないでいける元素。 つくることのできる骨格のバラエティーは、他の元素の比ではなく、生命はこれによって生じる様々な機能を有効に活用しています。 我々は、医薬品、香料、色、味、繊維からプラスチックまで、多くの有機化合物を合成し、生命活動、社会活動に用いています。

有機化合物のもともとの原料は、地底に眠る炭素資源である天然ガス、石油(ナフサ)です。 これは、生命体が最終的に分解するところまで分解した、生命現象のある意味での最後の姿ですが、人類はこれに目をつけて使い始めているというわけで、 石油化学工業で、ブタジエン、スチレン、シクロヘキサノール、安息香酸などに変換していきます。 こうして化学反応の原料となる簡単な構造をした多くの有機化合物が、すでに社会には用意されています。



目的の化合物合成はそう簡単ではない。でもやればできるようになった

しかし、ここから医薬品や、染料、人工甘味料、香水など目的の複雑な構造の化合物の合成は、簡単なことではありません。 難しい炭素骨格構築の課題を克服するため、先人が多くの革新的反応を開拓してきました。 例えば、ノーベル賞を受賞されたG.Wittig教授が開拓したWittig反応は、カルボニル基を直接オレフィンに変換できる方法で、初年度の教科書にも登場しますが、 これなどは、まさにこれまで人類がつくることができなかった化合物合成とそれによって人類に繁栄をもたらした革新的方法であったわけです。 こうして、いろいろな手法を駆使すれば、例外はあるがほとんどの化合物はいずれ合成できる、という境地に人類は達したといえます。



出てくる廃棄物はどうする。最後まで面倒を見るのは誰だ

こうして人類は大規模なプラントで大量の化合物を製造し始めるのですが、今度はその際大量の化学廃棄物が発生するという問題に直面しました。 現代有機化学では、目的とする反応を達成するために強い反応性を主にヘテロ原子の力を借りて創り出しており、これが最終的に廃棄物となります。 上で述べたWittig反応では、炭素2原子、水素4原子を酸素1原子と置換結合させる目的で炭素20原子、酸素2原子、リン1原子、水素21原子の原子浪費が必要になるのです。 その際の化学廃棄物は当然、環境に害のあるものも多く含まれますので、多量だといつまでもドラム缶に保存しておくわけにもいかず、ましてや環境にばら撒くわけにもいかない。 最後の手段とばかり焼却炉で燃やしたら、二酸化炭素になって大変だとか、塩素が存在すればダイオキシンが発生するとか、今まで平気でやってきた処理もできなくなってきた。 無理を通せばコストと社会批判で帰ってくる。 だからといって、明日から抗がん剤のように、作るのに多量の廃棄物を出す個人目的使用のものは、地球環境保全のため使わないようにしましょうといって一体誰が納得しましょうか。 簡単なリサイクル運動などでは、もはやどうにもならない状況です。

この問題は、工学的手法による小手先の処置では解決不能、廃棄物を出さない反応開拓こそが根本解決策ということで、有機化学者の元へ戻ってきました。 この本質的問題に取り組むため、我々のグループでは、(1)生命現象そのものに解決法を求め、最近明らかになりつつある肝臓の酵素の機能を、 有機合成を駆使してつくる疑似酵素型分子触媒で実現する、(2)廃棄物ゼロの化学の本質を見直し、全元素を視野に入れた新分子触媒を構築する、  の2つの方法論で研究を進めています。前者では「フラビン酵素」 「金ナノ触媒」「ニトロンメタセシス」 などのテーマを相互連携しながら、後者では「中性条件下で進行する炭素-炭素結合形成触媒の開拓と その触媒的本質の究明」の観点から研究を進めており、それぞれ廃棄物の出ない、 温和な条件下で進行する新しい触媒プロセス開拓で成果を上げています。