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研究内容


フラスコ フラビン触媒の合成法


「酸素酸化」の代表的反応例


「酸素酸化」の反応機構


「酸素還元」の代表的反応例


「酸素還元」の反応機構


第3世代デンドリマー分子の合成

フラビン会合体触媒の分子構造

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デンドリマー・フラビン会合体触媒:フラビン酵素類似の疎水性反応場をデンドリマーとの 会合で人工的に構築することで、酸素酸化や酸素還元にさらなる触媒効率と基質特異性が付与される。 フラビン単体触媒による過酸化水素酸化、酸素酸化に続く第3ステージの研究が進展中。

  



廃棄物のない反応を生体機能を手本に開拓する

生体内では外部から入ってきた毒素を分解したり、生物に必要な物質を生み出すためのさまざまな代謝過程に肝臓が化学工場として大きな役割をはたしています。 その働きのかなめがフラビン酵素などの酸化分解酵素です。 フラビン酵素は図1に示すような蛋白質でできた巨大分子ですが、そこに存在する1点のフラビン活性部位が、空気中の酸素によって特別に強い酸化力のある酸素活性種に変換されることで、 酸素分子中の酸素原子が基質へ移動されます。これらを鍵に、酵素は現代の科学の手法では行えない様な分子変換を分子上酸素の活性化を鍵にいとも簡単に行い、複雑な生理活性物質の合成を行っています。


フラビン酵素 cholesterol oxidase の分子構造

              図1.フラビン酵素 cholesterol oxidase の分子構造:
              ペプチド鎖に埋もれた中心にフラビン活性部位がある

 

活性中心にスポットをあてて、この酵素の働きをさらに詳細に言うと、図2に示すように、まずフラビン酵素EnzFloxは生態系における還元剤NADPHの働きによって還元型フラビンEnzFlEtH2に変換されます。 この活性中心は強い電子供与能を有しているためビラジカル性を持つ分子上酸素と電子移動を起こした後、結合して強い酸化活性を持つヒドロペルオキシド体EnzFlHOOHを生成します。 これこそが酵素独自の精緻な酸素分子の活性化ステップです。 そのあとこの酸化活性種は種々のアミンや硫黄化合物を酸化し、活性種自身は還元されてEnzFlEtHOHを与えます。 この活性種は脱水されて元の活性種に戻る。 このサイクルを続けることで、酵素は生体内でクリーンな酸素酸化反応を永続的に行っています。


フラビンモノオキシゲナーゼによる有機分子の酸素酸化の機構

           図2.フラビンモノオキシゲナーゼによる有機分子の酸素酸化の機構

  



フラスコで実現する1気圧の酸素だけで進行する酵素型酸化触媒反応

最近我々は、上記のクリーンな酸素分子による酸化の酵素機能をフラビン化合物と還元剤の組み合わせで実現することに成功しました。 これによって1気圧の分子上酸素雰囲気(フラスコの上に酸素の風船を装着するだけ)、 あるいは空気中の、室温の温和な条件下で、アミンやスルフィドを酸化する、生体反応そのままのクリーンな反応が、フラスコの中で実現できました。


  

これまでの有機合成の酸化反応では金属オキソ種M=Oのような分極活性化させた酸素分子のみを有機基質へ移動させることができ、 こうした金属化合物を化学量論量使用することではじめて酸化反応を達成してきました。 我々も含めて一部の先導的研究グループがこの金属活性種を過酸化物という酸素の活性化後の活性種O22-の等価体を用いて簡便に発生させることで、 金属の使用を触媒量に低減させることに成功していますが、今回の発見は、それをさらに1歩も2歩も進めて(1)重金属を使わず有機分子触媒で、(2)活性酸素等価体を使わず、 酸素あるいは空気雰囲気下で行わせることができるという画期的なものです。 

この触媒反応は、従来の酸化反応を環境にやさしい方法で行う、代替法という意味合い以外に、これまで有機合成では実現できなかった驚くべき選択性も有していることが分かってきました。 このフラビン触媒は環状ケトンをラクトンにするBaeyer-Villiger反応をMCPBAのような過酸ではなく1気圧の酸素で行うことができ、これ自身が極めて重要なことなのですが、 さらにこの反応が、酸化されやすいヘテロ原子化合物の存在下においても、ヘテロ原子の酸化を行わずにケトンのBaeyer-Villiger酸化だけを達成できることが分かりました。 一般に窒素原子やイオウ原子上に酸素が付加される親電子的酸化はよりもBaeyer-Villiger酸化のような酸素分子が求核的に付加する酸化よりも、はるかに進行しやすく、 事実Baeyer-Villiger反応における最適の酸化剤と言われているMCPBA(メタ過安息香酸)でも、ヘテロ原子の存在下にこれを行えば、ヘテロ原子の酸化が優先します。 フラビン触媒を用いたこの酸素酸化における求核的酸化は、酸化触媒反応においてこれまで優先したという報告すらないのですが、この触媒反応における選択性はほぼ100%です。 フラビンヒドロペルオキシド活性種の持つ独特の反応性を合成手法に有効に活用できたわけです。


イオウの酸化は最も起こりやすく、ケトンの酸化は起こりにくいのが常識

          イオウの酸化は最も起こりやすく、ケトンの酸化は起こりにくいのが常識
          ケトンを選んで酸化する酵素型有機触媒の驚くべき威力

  



酸素分子から窒素と水が副生される究極のクリーンな還元反応もできる。酸素酸化ならぬ酸素還元の新境地

最近ヒドラジンを酸素活性化に必要なフラビンの還元剤として用いると、反応系中で生成する還元能力の高い中間体であるジイミドによって有機化合物の還元反応が行えることを発見しました。 フラビン触媒存在下にオレフィンと1等量のヒドラジンを加え、1気圧の酸素雰囲気下、室温でオレフィンをほぼ定量的に還元することができます。まさに酸素で還元する感じです。 この方法では、危ない金属ヒドリド還元剤や分子状水素を使わず、1等量のヒドラジンから水と窒素が廃棄されるだけという、還元反応において究極に近いグリーンさが達成されています。


ついに実現した酸素1気圧、室温で基質を還元する安全で実用的な手法

          aerobic hydrogenation:
          ついに実現した酸素1気圧、室温で基質を還元する安全で実用的な手法

  

この手法を用いると選択的なD化が極めて簡便、安全、安価に行えるというところが特筆すべきポイントです。 以下の例のように、金属触媒存在下で高価なD2を用いたオレフィンのD化と異なり、ヒドラジンの重水との処理で比較的安価に得られるD化ヒドラジンをたった1等量用いて行うことができます。


            高価なD2を逃がさないように使うか、ヒドラジンを重水で
            処理した簡便試薬を使うか

  



酵素類似環境を提供するデンドリマー・フラビン会合体触媒と基質特異性発現への取り組み

肝臓の酵素では、ペプチドの折りたたみ構造で構築された内部の疎水空間に、基質を取り込んで反応する反応場が存在し、 これが酵素でしか達成できない基質特異性(反応する分子が決まっていること)を発現しています。これまでの単分子の 触媒反応では不可能なこの基質特異性の発現を目指して、我々は、フラビンと水素結合するデンドリマー分子を新たに 設計構築し、この触媒活性の検討を行っています。

上述のオレフィンの酸素還元にこの会合触媒が高い活性を示します。その際、一般に非会合体> 第1世代>第2世代>第3世代の順に、活性が上がりますが、その世代間格差は、還元するオレフィンに よって大きく異なります。これは、この会合触媒が、基質特異性を示した興味深い例といえるでしょう。


第1,第2、第3世代デンドリマー触媒(会合体)

   過酸化水素酸化、酸素酸化に続く第3世代研究:フラビン・デンドリマー会合体触媒による反応場制御