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単分子追跡法と単分子デフォーカスイメージング法

 図1が我々の単分子蛍光イメージング装置の概略である。装置構成は比較的単純で、蛍光励起用の連続発振レーザー光源(波長488 nm)とそれを顕微鏡システムに導く光学系、単分子からの発光を検出する検出器からなる。一般の共焦点顕微鏡とは違い、対物レンズの物体面で励起レーザー光はスポット径数十μm以上の平行光となっており、試料の数十 μmの領域をほぼ均一に照射する。単分子群の発光はEM-CCDでイメージとして一度に検出され、デジタル動画(イメージシーケンス)としてPCに保存される。またこの装置では、異なる波長のレーザー光も同時に顕微鏡に導入できる光学配置となっており、2種類の色素の同時励起や光化学反応誘起下での単分子イメージング等も可能である。

 図2aが高分子薄膜に分散させたゲスト分子の単分子蛍光像の一例である。この蛍光像のように、光学顕微鏡による観察の場合、光の回折限界のためにそれぞれの蛍光分子は直径200300 nm程度の輝点として観測される。この輝点の強度分布は2次元のガウス関数でよく再現でき(図2b)、画像解析から求まるガウス関数の重心の位置が蛍光分子の位置に対応する。単分子蛍光像のイメージ列に対して上記の画像解析を逐次施すことにより個々の分子の並進運動をおよそ数〜20 nm程度の精度で追跡できる。この手法を単分子追跡法(Single Molecule Tracking: SMT)と呼ぶ。SMTは光学顕微鏡の分解能に比べ2桁以上の位置決定精度でゲスト分子の動きを追跡できる方法である。

図1.jpg
図1 単分子イメージング装置の構成例.

 単分子の蛍光イメージングにおいて、フォーカスを僅かにずらす(デフォーカスさせる)という非常に簡便な手法で蛍光分子の配向に関する情報を得ることが可能である。図2cに単一蛍光分子のデフォーカス像の一例を示す。デフォーカスさせた場合、非当方的なパターンを示すことが分かる。この非当方的なデフォーカスイメージは、蛍光の双極子放射の非当方性に起因しており、図2cの場合矢印で示した方向が双極子の配向に一致する。分子の回転と共に放射双極子の配向も変化するため、この手法を用いることでゲスト分子の回転運動に関する情報を得ることが可能である。

a図2.jpg
図2
(a):高分子薄膜中の単分子蛍光イメージ
(b):2次元ガウス関数を用いた単分子蛍光像の解析例
(c):単分子の蛍光デフォーカス像の例


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