- 日本語
- |
- English
専門教育科目
合成化学コースで学ぶ主な専門教育科目について
合成化学コースの専門教育科目には特別研究(卒業研究)以外に必修25科目(57単位)、選択34科目(62単位)があります※。このうち、特に重要な科目グループである「有機化学系」「無機化学系」「物理化学系」「高分子化学系」および「実験系」各科目について、以下にそのポイントを説明します。
※ 2025年度学生便覧より
有機化学系科目
| 科目名 | 配当時期(学期) | 単位数 |
|---|---|---|
| 有機化学Ⅰ | 2学年前期(春~夏) | 2 |
| 有機化学Ⅱ-1 | 2学年後期(秋) | 2 |
| 有機化学Ⅱ-2 | 2学年後期(冬) | 2 |
| 有機化学Ⅲ | 3学年前期(春~夏) | 2 |
| 有機化学Ⅳ | 3学年後期(秋~冬) | 2 |
| 有機化学実験法 | 3学年前期(春~夏) | 2 |
講師:久木一郎教授、新谷 亮教授、鷹谷 絢教授、真鍋良幸教授
山元淳平准教授
有機化学系科目で学ぶこと
炭素原子を中心に構成される分子である有機分子は、糖、たんぱく質、脂肪、核酸といった生命現象にかかわる物質から 味、におい、色、医薬品、機能材料に関する化合物にいたるまで、人類の生活や豊かな社会の発展に必要不可欠な化合物です。有機化学は、この有機分子を総合的に取り扱う学問です。この一連の科目では、有機分子の結合論、物性、反応性、反応機構などの基礎、原理から、合成法、同定法にいたる応用までを、包括的に学びます。有機分子の構造と物性、反応性の相関を基礎から学んでしっかりと身につけることによって、医薬品新素材開発から環境、エネルギー問題まで、有機分子を扱う人類の諸課題に対して自分の頭で考えて結論が出せる人材の育成を目指しています。
「有機化学I〜IV」は、合成化学コースの2,3学年を通して系統的に行われる徹底した一貫教育のひとつで、K. P. C. Vollhardt, N. E. Schore著、本コース村橋俊一名誉教授ほかの監修、本コース戸部義人名誉教授ほかの翻訳の「現代有機化学」(化学同人)を教科書に用いて学びます。化学の専門性をもった人材は、大手企業や研究組織にとってのどから手が出るほど欲しい人材であり、将来有機分子を扱うあらゆるシーンで活躍するための第一歩としての基礎力が身につきます。また「有機化学実験法」は、有機分子の分光学的構造決定に関する理論と実践に特化した講義で、欧米で定評ある決定版教科書R. M. Silverstein, F. X. Webster著の訳書「有機化合物のスペクトルによる同定法」(東京化学同人)を用います。ここでは分光法の基礎理論と、複数のスペクトルで有機分子の構造を割り出す特殊技術を身につけることができます。
講師からひとこと
有機化学は現象論的で暗記することが多いため好きになれないという声を耳にしますが、有機化学は皆さんが思っているよりロジカルでかつシンプルです。確かに化合物命名法などについてはある程度ルールを覚える必要がありますが、有機化学の大部分はほんのいくつかの基本的な原理に基づいていて、ただそれらが様々な反応や分子のかたちになって現れるだけです。実はこのような多様性が有機化学のもっともおもしろいところではあるのですが、まずは姿かたちに惑わされることなくそれぞれの本質を見抜くことです。有機化学系の科目を学んでものづくりの基本とその考え方をマスターすれば、将来どんな業種の研究現場へ行っても通用すると思います。
無機化学系科目
| 科目名 | 配当時期(学期) | 単位数 |
|---|---|---|
| 無機化学A | 2学年後期(秋~冬) | 2 |
| 無機化学B | 3学年前期(春~夏) | 2 |
| 分析化学 | 2学年後期(秋~冬) | 2 |
講師:草本 哲郎 教授
神谷 和秀 准教授、松岡 亮太 講師
無機化学系科目で学ぶこと
無機化学系科目では、元素および分子が示す多様な性質・反応・機能、ならびにこれらを理解するための基礎に焦点を当て、周期表に代表される「物質の普遍性」と、個々の物質が示す固有の性質に由来する「物質の多様性」の両方を理解することを目標とします。具体的には、化学結合と電子状態、固体の構造、酸・塩基、酸化還元、分子の対称性、金属錯体の構造・性質・反応などを学びます。化学平衡を利用した分析法や分光測定法を通して、物質の組成・構造・性質を明らかにするための分析手法についても理解を深めます。さらに、有機金属化学や触媒化学、生物無機化学など、有機化学や物理化学、生化学との境界領域に位置する発展的な分野についても学びます。これらの学際領域における無機化学の役割と重要性についても理解を深めます。
無機化学A・Bでは、大学院進学を目指す学部学生向けの教科書として世界中で広く採用されている教科書を用いて、無機化学の基礎から発展までを体系的に学びます。ここで身につける「物質の普遍性」と「物質の多様性」という視点は、有機化学や物理化学のみならず、生命科学や物理学など、物質が関わる幅広い学問分野の理解の基となります。
講師からひとこと
授業を通して、みなさんに、無機化学の奥深さを実感してもらいたい、物事を多角的に捉える力を身につけてもらいたい、と思っています。無機化学Aでは、物質の性質を理解するための基礎を重点的に学びます。学びの中で学問体系としての理解が進むにつれて、物質に対する皆さんの興味が一層高まることを期待しています。無機化学Bでは、無機化学Aで身につけた基礎知識や概念を基に、金属錯体化学を中心に、「自在に分子を作り出す触媒化学」や「金属酵素による生体機能を解明する生物無機化学」などの発展的な分野についても学びます。化学の醍醐味である物質の多様性を実感してもらいたいと思います。分析化学では、物質に含まれる成分、その量、構造や状態を明らかにするための考え方を学びます。単に手法を覚えるのではなく、その背景にある物理化学的原理を理解し、物質を測ることが化学現象の理解につながることを学んでもらいたいと思います。
物理化学系科目
| 科目名 | 配当時期(学期) | 単位数 |
|---|---|---|
| 物理化学 | 1学年後期(秋~冬) | 2 |
| 物理化学Ⅰ | 2学年前期(春~夏) | 2 |
| 物理化学Ⅱ-1 | 2学年前期(春~夏) | 2 |
| 物理化学Ⅱ-2 | 2学年後期(秋~冬) | 2 |
| 物理化学Ⅲ-1 | 2学年後期(秋~冬) | 2 |
| 物理化学Ⅲ-2 | 3学年後期(秋~冬) | 2 |
| 物理化学Ⅲ-3 | 3学年後期(秋~冬) | 2 |
講師:福井 賢一 教授、中西 周次 教授、倉持 光 教授
今西 哲士 准教授、伊都 将司 准教授
物理化学系科目で学ぶこと
物理化学とは「なぜに答える」学問といえます。世の中には有機、無機、高分子、固体、生体物質などいろいろな物質があり、それぞれ色、形、硬さ、反応性、電導性などで異なる性質を持っています。なぜ、このように多様な物質があり、多様な性質が現れてくるのでしょうか。物理化学は、この問題を原子・分子の運動、さらには電子と原子核の運動をもとに根本原理から解き明かします。上記の一連の科目では、熱力学、量子化学、反応速度論という物理化学の三大理論を中心に、巨視的および微視的なものの見方を織り交ぜて、多様な物質の構造と性質について全体的・体系的な理解ができるように統一的に講義が進められます。こういう基礎的な理解を深めることによって、現代的な物質観としっかりしたものの見方が身に付き、将来創造的に物事を解決していく能力を身に付けることができます。
創造的科学技術者を育てる授業を目指して
「物理化学」(1年後期、化学工学コースと共通科目) および「物理化学I,II,III 」は、1冊の教科書を用いた一貫教育となっています。教科書は、P. W. Atkins著、千原・中村訳「物理化学」(東京化学同人)で、このほかに本学科名誉教授、坪村 宏著「新物理化学」上、下(化学同人)を指定参考書としています。講義内容は、「物理化学」と「物理化学I」が熱力学、「物理化学II-1、II-2」が量子化学、「物理化学III-1、III-2」が反応速度論と表面・電気化学となっています。Atkinsの教科書はいま世界中で広く使用され、英語の原書も容易に入手できますので、原書を用いて学習を行い、英語能力を磨くこともできます。さらに坪村先生の「新物理化学」を学ぶことによって高度な知識を身につけることができます。
最近は、環境、バイオ、エネルギー、IT、ナノテクといった言葉が新聞やテレビにしばしば登場します。これは現代の科学技術の最先端がこの辺にあることを意味しています。これらの分野はみな化学(特に物理化学)に密接に関係した分野であり、本コースの学生諸君が将来これらの分野のどこかで世界的に活躍する確率は極めて高いといえます。物理化学系科目ではこういう状況をしっかりと認識し、基礎的・体系的理解を進め、科学技術の最先端において困難な課題に立ち向かい世界の秀才に伍して創造的に物事を切り開いていける力が身に付くように講義を進めています。
講師からひとこと
物理化学の内容は、上にも述べたように、熱力学、量子化学、反応速度論が三本柱になっていますが、どれもなかなか難解で、しかも偏微分方程式などの未修得の数学が頻繁に登場するため、学生諸君は理解に苦しみます。しかし、それだからといって、本コースでは、講義内容の量を減らしたり、レベルを下げたりするというようなことはしていません。ここで教える程度の知識は将来必要であり、また、難しくてもひるまずに努力してこれを突破するという習慣を身に付けることも大切と考えるからです。表面的な知識やhow toのレベルで満足せずに、基本的な事項を深く理解するように学習してください。
高分子化学系科目
| 科目名 | 配当時期(学期) | 単位数 |
|---|---|---|
| 高分子化学A | 2学年後期(秋~冬) | 2 |
| 高分子化学B | 3学年前期(春~夏) | 2 |
講師:新谷 亮 教授、久木 一朗 教授
高分子化学系科目で学ぶこと
タンパク質、核酸、多糖などの天然高分子から、プラスチックスをはじめとする合成高分子まで、高分子化学が対象とする物質は広範囲にわたっていますが、いずれも多数のユニットが鎖状につながった分子という共通性をもっています。このような鎖状分子の実在が証明され、高分子の科学が確立したのは1930年ごろのことですが、いまや人類の生活や豊かな社会の発展に必要不可欠な物質として広く用いられています。
高分子化学では、まず”高分子とは何か”を、生活に密着したいろいろな高分子製品についての説明と講義実験により、わかり易く解説します。次いで、高分子に特有の、分子量と分布、立体規則性、溶液や固体中でのふるまい、および機能の発現に関する基礎的な概念を、低分子と比較しながら学びます。後半では、高分子生成反応のより詳細な理解のため、種々の形式の重合反応について、重合反応機構、重合反応速度論、共重合理論、重合の立体化学など、高分子生成反応に特有の諸問題について学びます。これらの基礎的理解をもとに、高分子の構造制御につながる重合反応の制御についても解説します。
講師からひとこと
高分子化学は高分子(ポリマー)を対象とする化学ですが、有機化学も物理化学も最大限に利用して、高分子をつくり、その特質を理解しようとする総合的な学問です。でも、ほかの化学の足し算(Σ)だけでは、たとえば炭素がつながっただけの単純な高分子、ポリエチレンが示す多様な特質を説明できません。そんな高分子独自のおもしろさを伝えられればと思っています。同時に、高分子材料はあまりにも身近にある材料で、化学の対象として見ることを忘れがちですが、この講義を通して、普段から身の回りのものに化学の目を向ける意識を養ってくれることも期待しています。
実験系科目
| 科目名 | 配当時期(学期) | 単位数 |
|---|---|---|
| 無機・分析化学実験 | 3学年前期(春~夏) | 4 |
| 化学工学実験 | 3学年後期(秋~冬) | 1 |
| 合成化学実験 | 3学年通年(春~夏、秋~冬) | 6 |
| 物理化学実験 | 3学年後期(秋~冬) | 5 |
講師:合成化学コース 各教員
実験系科目で学ぶこと
物質を分子の世界から理解し、新規分子創成、物質創成の手法開発、新物性開発、また物質の分析や解析手法の開拓等の創造的能力を獲得するためには、講義を通した知識の取得も重要なことですが、実験技術や実験結果の解析、分析法などの実際の研究や開発に必要な能力も要求されます。この実践的トレーニングのために、以下の4つの学生実験が用意されています。
無機・分析化学実験:新化合物の開発や、無機生物化学、有機金属化学など様々な分野との接点を有する無機化学と、化合物の同定や物性の測定の手法として化学のあらゆる分野と密接に関係する分析化学の基本的な実験を行うことにより、その考え方と実験技術を修得するとともに、化学のあらゆる分野の基礎を身につけることを目的としています。
化学工学実験:物質およびエネルギーの変換を取り扱う化学工学の学問体系を理解し応用力をつけるため、設定課題について実験し、得られたデータを解析し、データの有用性の評価によって課題現象の理解、データの誤差や信頼性の評価などの取り扱いを学びます。
合成化学実験:有機化学や高分子化学の講義で学んだ知識を活用して、実際に有機化合物や高分子化合物の合成を行います。また、実験を通して蒸留、再結晶、抽出などの単位操作や、クロマトグラフィー、NMR、IRなどの機器を用いる分析を習得します。また、特に引火性、発火性物質を扱うことの多い有機合成実験では、用いる反応剤の性質をよく調べ、実験操作手順を熟知し、安全で確実で、かつ能率のよい実験方法を修得します。
物理化学実験:熱、光、電気などの種々のエネルギーと物質の相互作用及び物質と物質の相互作用(化学反応)を物理的な方法で観測、測定する基礎的な手法を習得します。このために実験の原理を理解し、実験の目的を明確にする能力を身につけること、この原理を応用した装置の構造や取扱い方法を学び、実際に試料を作製して測定を行うこと、得られた実験データの誤差を考慮しながら結果を整理し、考察を行う能力を身につけることを目指しています。
これらの実験に必要なテキストの紹介、実験開始前のガイダンス、個々のテーマの説明、安全のための教育なども十分に行われます。科学技術の探求に必要な実験技術、化学薬品の取り扱い手法、実験(研究)の前に行う調査、報告書の作成などについて、しっかりとした技術を身につけられるようにプログラムされています。
講師からひとこと
上にも述べたように、学生実験では講義で学んだことの理解を深めると共に、実際の実験技術、実験時における安全の確保、データの解析・分析手法、文献の調査、実験前後の準備と報告書作成等、研究・開発に必要な教育が多くの教員により密度高く行われます。合成化学コースの3年生のカリキュラムでは、1年間を通してほぼ毎日のように上の学生実験を履修します。多くの場合、一人一人別々に装置や器具を用いて実験を行いますので多大な努力が要求されますが、このように質・量共に充実した学生実験を受講することにより、化学の面白さを発見し確実に化学に関する実力を身につけることができます。合成化学コースでは、次世代の新たな化学を自ら創造できる研究者・技術者の育成のために、熱意を持って多くの教員とTA(大学院生による実験補助員)による実践的な学生実験を行っています。真面目に慎重に実験をしながら、化学の面白さを実感するとともに、大発見を見逃さない優れたセンスを身につけて下さい。