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  • 研究内容 » わかりやすい!カンタン解説 肝臓酵素型有機触媒フラビン

研究内容


有機化合物、有機合成と環境:
有機化合物とは、主に炭素原子からできる分子で、医薬品、石けん、香水、プラスチック原料、 新素材、電子材料など、豊かな社会づくりに役立っています。石油や天然ガスを原料にして、 有機合成という先端技術でつくります。


酵素のからまり具合と働き:
酵素ではこのからまり具合がとても重要です。このからまりでできた空間にみごとに ほしい分子だけがすっぽりと入りこんで、逃がさないようにするんです。分子を捕まえたら、 今度はなかのウツボ(赤い部分)がかみついて化合物の形を変えます。 こうして望みの分子のすがただけカラダの都合のいいように変える働きをします。 人間にはまだまねのできない、精緻な働きです。


環境にやさしい反応:
(1)1気圧の酸素だけで反応します。これは工場ではとてもいいことです。 なぜなら、空気はただで、いつでも誰にも断らずに使えますから。 普通はクロム酸など重金属を含む酸化剤を用います。(2)反応したとき 水が廃棄物で出るだけです。クロムなどの健康に悪い物質が多量に環境に 排出されることもありません。(3)用いる化合物フラビンはビタミンB2 の仲間で、安価で安全です。


  • 肝臓酵素型有機触媒フラビン
  • 肝臓酵素型有機触媒フラビン


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肝臓の酵素は体の中でやさしく化合物をつくってくれています。これはその働きを まねようとデザインしてつくった人工の分子です。大きさは、1メートルの1億分の1で、 おもに炭素でできています。これをフラスコの中に少しだけ入れると、勝手に働いて 肝臓のように、環境にやさしく化合物をつくってくれます。

  



有機化合物は役に立つが、つくるとき環境を汚す

有機化合物は、抗ガン剤や、有機ELの材料など、今では社会になくてはならないものです。 これは石油から炭素原子をつなぎながらつくるのですが、なかなか難しく、重金属などを 使用するので環境はすぐ汚れてしまいます。人間が、化合物をつくれるようになってまだ 100年足らず。新しい役に立つ化合物をつくって豊かさを追求することに必死で、 そのために環境が汚れることなど、気にする余裕はなかったのです。でも最近そういう 甘えたことも言っていられなくなりました。環境汚染は、豊かさを追求してきた私たちに しっぺ返しを繰り返しはじめています。この狭い水槽のような地球で、我々が豊かに生きて いくためには、もっともっと知恵を絞る必要が出てきたのです。


肝臓は、体の中の化学工場、その機能はすごい

私たちは、この難問に対して生命体から何らかの答えを求めてみることにしました。 実は化合物合成が最も上手なのは、人間様の頭や手ではなく、カラダそのもの。 肝臓です。肝臓は、とてもクリーンな化学工場で、体がダメージを受けないように、 私たちにとって必要な化合物をカラダにやさしい方法でつくり、カラダに必要ない 毒素はおしっこで出てしまうように分解してくれています。


肝臓の酵素によく似た化合物をつくって研究

その働きは、肝臓のなかの酵素が行います。酵素というのは生命体そのものではなく、 生命が創り出す大きな分子です。たとえば、肝臓の酵素は下図のような分子で、 炭素原子と窒素原子がつながってできている長い1本のタンパク質のひも (青い部分)が、からまって団子のようになったものです。真ん中に赤く 見えているのはこのひもの末端の活性部位、化合物を変える働きをする部分です。 ひもの中でウツボのように隠れています。


フラビン酵素 cholesterol oxidase の分子構造

 

これは生命体にしかつくれない複雑な分子です。私たちは、この赤い最も重要な部分だけ切り取って、 工場でつくれる小さな分子にして使ってみたのです。これがその切り取った部分です。 みなが「亀の甲」とよぶ表記法で書くと、赤い部分はこうなります。大きさは1メートルの 10億分の1で、フラビンと呼んでいます。

フラビンの構造


環境にやさしい反応がフラスコで実現できた

この分子をフラスコの中に少量入れると、酵素だけができるといわれていた環境にやさしい反応が、 フラスコの中で実現できることがわかりました。具体的な反応例や、その働きは大人用の説明を のぞいてみてください。現在は、もっと肝臓の酵素のはたらきに近づこうと研究を続けています。 最上部の動画は、そうした努力の中から創りあげた、炭素を中心にくみ上げた人工分子です。 大学院生の学生さんが、プラモデルを作るように小さな炭素の部品をくみたててつくりました。 その方法も大人用のページに紹介しています。

有機触媒フラビンによる肝臓の酵素機能シミュレーション